【POKKA吉田】釘の話【業界コラム】
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最終更新日:2017/11/24
POKKA吉田コラム POKKA吉田, ぱちんこ業界, 釘
5月になってぱちんこ業界はかなりヤヤコシイ状態になっている。いくつかあるが、異例の指導になったということで釘の問題について概要を触れておく。
釘の問題というのは、表面上の事実はこのようになる。
・5月の遊技産業健全化推進機構理事会で警察庁の要請に基づき釘のチェックをすることが決定
・機構理事会決定後、ホール5団体に対して警察庁が釘曲げしないように指導
・機構は覆面調査で釘というよりも玉を実際に飛ばして入賞個数を数える
・機構は他の立入りとは違い、異常入賞数(入らない等)があっても半年は警察に通報しない
警察庁のロジックは、杓子定規に言えば「正しい」。そのロジックは「釘曲げによって検定型式と異なる性能の遊技機になっている」というものだ。
保通協の型式試験に申請するとき、メーカーは「釘を叩いている」。規則では「板面に対しておおむね垂直」という釘の規定があるが、この「おおむね」というのは、実務上「10度前後」でも適合が出る。10度まで曲げて良いのであれば、型式試験のときは試験に適合しやすくするために極端な釘で申請し、ホールに納品するときはそういう釘で納品しない、ということが可能になる。結果、たしかにホールの釘は検定型式の釘とは全く異なるものとなっている。
型式試験に申請するときの釘調整、これを「諸元表釘」と呼ぶ(型式試験申請ゲージとも呼ぶ)。諸元表釘とホールの営業釘が全く違うから「曲げるな」というのが警察庁の理屈だ。これは法律論としては完璧に正しい。
しかし、警察庁がホールにやらせようとしていることについては実は「法律論としてはかなりビミョー」である。警察庁がホールにやらせたいのは「他穴入賞口(スタートでもアタッカーでもないただの払い出し入賞口のこと。一般入賞口、フロック、ベース、その他いろいろ呼称がある)を開けろ」である。実はこれだけが警察庁の狙いだ。
そうなると実はオカシイ。諸元表釘というのは「スタートに全然入らない、他穴にはガンガン入る」という調整になっているのである。そうしないと試験に適合しないのは「役物比率」という規定があるからだが、単純に「大当たり以外の払い出しが多くないと適合しない」と考えてもらえればいい。スタートが低いと大当たり回数は少なくなるし他穴入賞が多いとその分役物比率規定に抵触する可能性が低くなるのである。
しかし、警察庁は「スタートを今の半分近くまで落とせ」とは言っていない。「ベースを上げろ」としか言っていないのだ。
過去、一発台、おまけ、ダービー物語、3種権利物など、釘について警察庁が強く指導したケースというのは多いのだが、これらはいずれも「特定機種、特定カテゴリの機種」について、である。しかし今回、他穴入賞というのは「全てのぱちんこにあてはまる」ものだ。そして断言するが「全国全てのホールのぱちんこ遊技機は、諸元表釘とは程遠い」のである。
警察庁が禁断の「全方位釘指導」ということに打って出てきたのが5月のこと(機構へのチェック要請はもっと前のことだが)。「諸元表釘にしないといけないならマーケットが終わってしまう」という危惧もあったが、警察庁は「諸元表釘にしろ」とは言わず「他穴入賞を増やせ」と言う。機構のチェックは6月からはじまるが、半年は通報しないという。
この件、とてもヤヤコシクて、とても流動的だ。今、わかっていることは「他穴入賞を増やせ」という強い指導がやってきたので今から半年後は「いくらかは玉持ちが良くなる」状態になるだろう、ということだけである。
釘というのは、釘曲げで行政処分を受ける場合、最悪のケースで営業許可取消し処分まで可能の「量定A」の違法行為である。広告宣伝規制は直近に違反前歴がなければ「指示処分(いついつまでに違反行為を改善しろ、という命令)」が普通で営業停止にすらならないものなので、広告宣伝規制違反指導とは業界が感じるインパクトは全然違うものである。
今後、どうなるか。通報猶予期間の半年の間の警察庁と機構の動向に、ホール5団体は戦々恐々としている。
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